ほろにがい引っ越しの思い出

ほろにがい引っ越しの思い出

私は独身時代に一人暮らしをしていました。

 

ある年に2回、同じ市内で引っ越しをしたことがあります。

 

3月にAアパートを出ることになっていたのですが、友人が貸してくれるはずだったBマンションに入れるのが9月以降、という事情になってしまいました。

 

仕方のない成り行きでしたが、私は3月から9月の間の半年間、Cアパートに住むことになったのです。

 

短期の入居でも快く受け入れてくれた奇特な方が、そのCアパートの大家さんでした。

 

それは町の中の明るい一画にあり、通勤への交通の便もよく、またスーパーや個人商店など、周辺環境もとても便利で申し分がありませんでした。

 

同じアパートの住人は、私と同じ世代の女性ばかり。行き合えば挨拶を交わすくらいの間柄でしたが、騒音などのいわゆるご近所トラブルは全く起きませんでした。

 

家賃は大家さんに現金手渡しするのが原則だったのですが、そうやって月々のものを届けに行くと、

 

●さん(=私)、大丈夫?困ったことはない?先月から××が?だから気をつけてね

 

など、親身な立ち話をしてくださいました。

 

よく、店子にとって大家さんというと、嫌味をいったり、やたら生活ルールに厳しかったりと、要注意なマイナスなイメージがあるものですが、ここの大家さんだけは全く違っていました。

 

そして予定通り、半年後に私は退居手続きをし、Bマンションへ移ることになったのですが…

 

 

改めて、半年の間に慣れ親しんだ素晴らしい環境を惜しむ気持ちが日に日に強くなって困りました。

 

Bマンションはもう決定事項として契約済みだったので、これを破棄することは今更できない相談でした。

 

あまり考えないようにして、引っ越しトラックを見送り、私自身は大家さんにご挨拶に伺ったのですが…

 

大家さんは何と、私にお花の鉢を下さってこう言ったのです。

 

「あなたは本当に真面目な方で、私大好きだったんですよ。新天地でも、どうか元気でいてね。」

 

ここに来て、引っ越しをする自分を呪い、また半年前の取り決めを後悔しました。

 

私はひたすら、心からの感謝の念を伝えて、とぼとぼと自転車で新居にむかうべく、大家さんの家を後にしました。

 

過去の人生に、なるべく後悔の念は持たないようにしています。ですがこの引っ越しの一件だけは、今でも悔やまれるほろ苦い思い出です。

 

参考サイト:電子ピアノ 引越し 料金